ごっこ遊びの話

  初めましてレディ。おれの名前はサンジ。グランドライン、ゴーイングメリー号の愛の奴隷、ラブコックと言ったらおれのことだ。

  しかしながら、お嬢さん。今日は悪いんだけど恋するコックさんはお休み中なんだ。なに?どうしたのかって?え、優しいなァ、聞いてくれるんだ。レディにこんなことを言うのは本当は気が引けるんだけど、ちょっとおれの愚痴を聞いてくれないかな。



  女王様と下僕ごっこらんでぶー



  おれたちの船には、女王様が二人いる。(その昔には王女様がいたこともあったけどね)

  ついでに食料を荒らす巨大鼠も三匹ほどいてこいつらもおれのストレス源になっていたりするのだが、まあともかく女王様が二人いる。どっからどう見ても極上 の美女、麗しのオレンジのクイーンと、どっからどう見てもおれ以外には麗しくなど見えないらしい、でもおれにとってはやっぱり麗しのグリーンの毬藻。 あァ、もしかしたら癒しのグリーンだったら誰もが賛同するかもかもしれない。ぐうたらばかりだから観葉植物的だしな。ちなみにクルーのあともう一人はその 控え目さ故に、心を砕きたくなる黒髪のミステリアスなレディである。

  さてさてこんなことを並べ立ててみておれは一体何が言いたいのかと言えば、おれのストレス値?というか疲労度というのはここの所限界に近いらしいのだということだ。



  そりゃ、さ。ナミさんにめろりんしているのはおれの勝手だ。美しい女性に自分の持てうる限りの賛辞の言葉を贈るのは当然のことだ。紳士の嗜みだ。そしてそ んな女性に仕えるのも当然、紳士なおれの役目だ。だから都合よく顎で使われようが、雑務一切(胃袋底なし船長のお守りつき)をふられようが、おれには全然 問題ない、はずだし、普段なら事実問題ない。むしろ幸せいっぱい夢いっぱいだっ。ナミさんらぶー。ぼくはあなたの下僕です。仕えられることが至上の幸せで すっ。

  そりゃ、さ。ゾロを甘やかしてるのはおれの勝手だ。人に滅多なことでは甘えない愛しの恋人がおれにだけ甘えてくれてると思うと、そりゃおれもな、いくら野 郎に遣う気なんて持ってねェといっても、ついつい、な。だから酒せびるときとか、腹減ったときにしか近づいてなんてこねェとは知りつつも、そんなことおれ には全然問題ない、はずだし、普段なら事実問題ない。むしろ幸せいっぱい夢いっぱいだっ。ちっ、仕方ねェな。お前、緊急時じゃなけりゃ、おれくらいにしか そういう横暴なことしねェよな。頼ってくれてるんだよな?甘えてくれてるんだよな?可愛いなクソ毬藻め。仕方ねェな、下僕ごっこしてやるよ。



 と、いつもならそう思うんだ。別に2人にこき使われようが楽しいし。あァ、おれって頼りにされてるなって思うし。

  でもそれは、《普段》ならの話みたいだ、どうやら。

  どうもおれは最近疲れてるみたいで、なんでだか普段なら気にならないそういう細々したことに疲れちまう。ナミさんに雪かきまかされたり、そのあと忘れたれ たり。ゾロに酒せびられたり、そのあと放置されたり。何、お疲れさま?ありがとうレディ。君は優しいんだね。その言葉あいつに言わせたいよ。

  ナミさんがこき使ってくるのも、クソ剣士が都合の良いときだけいい顔してくるのも、なんかそこに《愛》はあるのかよ、て思っちまうんだよな。

  いや、普段の2人の素っ気ない高飛車な感じも好きなんだぜ。甘えてくるときのナミさんの決め顔とかも好きだし、毬藻のにやにやした感じも好きなんだ。そう。あいつそういうときはとてつもなくいい顔で笑うんだよなァ。ああいうときだけは。

  だけどなん…


  ごいんっ。



  いってェ。何すんだこのクソ毬藻。おれは今この可愛らしいお嬢さんと話してるんだよ、邪魔すんじゃねェっ。
 
 あ?なんだって。買い出し?そんなん後でいいだろ。

  って、ちょい待て引っ張るんじゃねェ。伸びる。シャツ伸びるからっ。てめェ馬鹿力なんだから加減しろよ。まだおろしたばっかなんだぞこれ。

  あァ、お嬢さんごめんね話しきいてくれてありがとう。また、機会が…あ、ちょっとごめん。なんだって?言いたいことがあんならはっきり言えクソ剣士。あ、言わねェの。何だよ、妬いたのかよ?



  え、ちょっ、顔真っ赤お前。



  こうして女王様と下僕ごっこはまた続いて行くのです。



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